3ヶ月分の必需品をパンパンに詰め込んだスーツケース1つ握りしめ、私はParisにやってきた。2011年の夏のことである。
家族旅行では何度も訪れた土地だが、今回初めての一人旅という事もあり心臓が飛び出しそうだった。旅慣れた方には想像もつかないだろうが、英語はおろかフランス語も殆ど出来ない私にとってはちょっとした冒険である。
スリはいないか?道は間違っていないか?背中にぐっしょりと冷たい汗をかきながらメトロの階段を降りた。なんとまぁ、私のスーツケースの重いこと· · ·!
首にまとわり付く髪の毛を払う余裕もなく階段をズルズルと降りていると、何者かが私に声を掛けスーツケースを階段の下まで持っていってしまった。
「何、ドロボー?!どうしよう!!」
そう思った瞬間、その黒い影は階段の脇へそっとスーツケースを置き、笑顔だけ残して消えた。この一連の動きは時間にすれば5秒ほどであろうか。あっという間の出来事である。警戒心200%の私は彼を泥棒だと勘違いしたが、単に親切で私の重いスーツケースを運んでくれたのである。呆気にとられた私はお礼をきちんと言ったのだろうか、覚えていない。
なかなかの男前だったことだけは記憶しているが。。
この日は結局トータルで3回も様々な紳士達にスーツケースを運んでもらいメトロの階段を苦労することなく移動出来た。なんて親切なの!
Paris初日、なんだか良い予感✨ ふふ